新人の効用

毎年6月、部門に新人が配属されてくる。
去年は8人、今年は6人の新人を受け入れた。


初々しく、素直で、眼を輝かせている新人たちを迎えると、私は、明るい表情で、良い姿勢で、活力にあふれた振る舞いができるようになる。


あたかも10年先を見通しているかのような自信に満ち溢れ、確信を持って部門の経営を指揮できる。


冗談や軽口もこなし、マメなフォローも欠かさない。


それはおそらく、新人たちを失望させたくない一心だ。
良い部に配属されてよかったと、思って欲しい。
そして、新人に見習って欲しい上司を、演じていたいのだ。
もっとはっきり言えば、新人から好かれたいのである。


数ヶ月が経ち、新人がチームに慣れて新人らしさを失うにつれて、その魔法は消えてゆく。 私は再び、イライラしたり、怒ったりするようになる。


新人が新人らしい初々しさを維持してくれると、私は演じ続けることができるのかもしれないのだが、新人が新人らしさを失うのは、これは必然で避けようが無い。


今年はなるべく長く、新人に対して、演じたい自分を演じ続けることを目標に頑張ってみようと思う。